kirsche_vol28
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自然放射線(日本)空気中のラドンから0.48mSv行為の正当化防護の最適化宇宙から0.3mSv東京〜ニューヨーク航空機旅行(往復)0.11〜0.16mSv大地から0.33mSv食物から0.99mSv個人の線量限度人工放射線胸部CT検査(1回)2.4〜12.9mSv胸部X線検査(1回)0.06mSvがんのリスクとその要因(放射線や生活習慣によるもの)生活習慣によるリスク山形ロイヤル病院 放射線科放射線によるリスク確定的影響のしきい値γ(ガンマ)線急性吸収線量のしきい値しきい値1%の人に症状が現れる線量障害臓器/組織一時的不妊永久不妊造血能低下皮膚発赤皮膚熱傷一時的脱毛白内障(視力低下)皮膚(広い範囲)皮膚(広い範囲)がんのリスク大がんのリスク大100ミリシーベルト未満の放射線を受けた場合検出困難放射線の影響だと証明することが難しいレベルいます。必要以上にこわがらず、放射線のことを知ることで正しく理解していただけたらと思います。 放射線の人体への影響は「確定的影響」と「確率的影響」の2つに分けられます。 確定的影響とは、ある一定の線量を被ばくすると必ずその症状が現れるという現象のことで、その線量を受けた集団の1%に影響が出る線量のことを「しきい線量」といいます。確定的影響にはどんな症状があるかと言うと、急性被ばくによる嘔吐、脱毛、白内障、不妊等があります。被ばくする線量が多いほど症状は重くなりますが、しきい線量を超えない限り確定的影響が人体に現れることはありません。 人体への影響のもう一つが確率的影響で、これは放射線を被ばくする量が多くなるほど影響が現れる確率が高くなるという現象で、症状は発ガンと遺伝的影響の2つとなります。確定的影響とは違い、しきい線量がありません。またたくさん被ばくしても影響が現れる確率が上がるだけで、症状が重くなるわけではありません。しきい線量が無いので少ない線量でも発ガンする可能性がありますが、飲酒や喫煙によるリスクに比べるとかなり低いと言われています。 表紙や下記の図が、放射線検査等の大体の被ばく線量になります。 胸部のレントゲン1回あたり約0.05mSv、人体に影響が出る最も低い線量から比べてもかなり少ない線量であることがわかります。単位は変わりますが見てわかるように100mSv以下では臨床症状、人への影響が確認されていません。よく患者様や健診を受けにきた方から、バリウムとレントゲンやCTとレントゲンを1日に両方受けて大丈夫なのか?と聞かれますが、この絵が示すようにCTとレントゲンを行っても人体に影響の出る100mSvの10分の1以下の線量なので安心してください。もちろん少ない線量であっても撮影する放射線技師は確定的影響が出ないように、また確率的影響の可能性を少しでも減らせるように配慮して撮影を行っています。また意外と知られていないと思いますが、放射線は検査などで使われる人工的なもの以外に、自然界にも存在しています。これを自然放射線といいます。ふだんからみなさんの身の回りにも放射線があり、普通に生活しているだけでも年間で約2.4mSv被ばくしています。自然放射線による年間線量(日本平均)2.1mSv自然放射線による年間線量(世界平均)2.4mSv 医療において放射線を取り扱うときには、「放射線防護の三原則」という考え方があります。 行為の正当化とは、医療において検査に伴うメリットである病気の診断や治療が、被ばくに伴うリスクを上回るときにのみ行われます。これは医師の判断と患者さんの合意の下で決定されます。医療における防護の最適化とは、医師が知りたい情報を欠かない範囲で、患者の被ばく線量を低く抑えた画像を作ることです。検査目的に応じて必要な画質・線量は変わってきます。身体の見たい部分以外に放射線を当てないようにすることも重要な防護の方法の一つです。病気を見つけるというメリットがあるために、医師により放射線科にオーダーが出てそれに対して必要な放射線の線量で無駄な被ばくをしないようにしているので、患者等には被ばくによる制限がありません。一方、放射線業務従事者が受ける職業被ばくでは、被ばくによる利益は生まれないため、線量の制限が定められているのです。 最後に放射線被ばくによる発ガンのリスクを生活習慣におけるリスクと比較したものを紹介します。喫煙、大量飲酒による発ガンのリスクは大体1000mSvの放射線を受けたのと同じくらいのリスクがあります。 胸のレントゲン1回撮影の被ばく線量が約0.05mSv、仮に0.1mSvだとして10000回撮影した線量を一度に受けたのと同じくらいのリスクだと思って下さい。他もみてもらうとレントゲンやCT検査の画像診断の被ばくによる発ガンのリスクより、生活習慣によるリスクの方がはるかに高いということが分かると思います。1,000〜2,000ミリシーベルトの放射線を受けた場合500〜1,000ミリシーベルトの放射線を受けた場合200〜500ミリシーベルトの放射線を受けた場合100〜200ミリシーベルトの放射線を受けた場合※放射線によるリスクは、広島・長崎の原爆被ば く者の約40年間の追跡調査からの固形がんリス クデータ。放射線は、原爆による瞬間的な被ばく であり、長期にわたる被ばくの影響を観察したも のではありません。※生活習慣によるリスクは、日本の40〜69歳の 地域住民を約10〜15年追跡調査した全ての がんリスクデータ。※本データは、(国研)国立がん研究センター「わ かりやすい放射線とがんのリスク」(2014年7 月改訂版)(PDF)をもとに作成。しきい値を超えるとこれらの症状が必ず起こるのではなく、「起こり始める」のです。つまり、これ以下の被ばく線量ではこれらの症状は絶対に起こりません。潜伏期しきい値(ミリグレイ)3〜9週精巣精巣卵巣骨髄約100約6000約3000約5003週1週以内3〜7日1〜4週2〜3週2〜3週20年以上3000〜6000以下5000〜10000皮膚眼約4000約500x・γ線:グレイ≒シーベルト喫煙・大量飲酒取り過ぎ()放射線防護三原則被ばく線量1.8倍1.4倍1.19倍1.08倍発がんリスク 放射線と生活習慣との比較1.6倍1.29倍やせ過ぎ1.22倍肥満1.15〜1.19倍運動不足1.11〜1.15倍塩分の1.06倍野菜不足確定的影響と確率的影響

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