心臓は全身に血液を送り出すポンプの役目をしています。心不全とは、ポンプの機能が低下し、体全体に十分な血液が送り出せない状態をいいます。つまり「心不全」は病名ではなく、心臓が衰えた状態をあらわす「症候名(状態)」です。心不全の症状としては、呼吸困難・咳・動悸・浮腫などを生じます。心不全を来たす病気としては、心筋梗塞、高血圧、弁膜症、先天性心疾患、不整脈などすべての心臓の病気が含まれます。
ほとんどの心不全は長い時間をかけてだんだんと症状がすすみます。つまり、心不全は、治療によりその進行を少しでもおさえながら生涯つきあっていく病気です。生命予後の改善(より長く生きられるようにする)と症状を改善し日常生活をより楽に快適に過ごせるようにすることを目標に、重症度に応じて段階的な治療が行われます。
心不全の治療は内服薬や生活指導、リハビリなどがあり、多くの方はこれらの治療で日常生活を送ることが可能となります。まずはライフスタイルの改善(減塩、減量、禁煙、アルコール制限など)を行う必要があります。また重症度に合わせて運動療法(心臓リハビリテーション)を行う必要もあります。心不全の薬物療法としては、心臓のポンプ機能を高めたり、むくみやその他心不全に伴う症状を改善するためのお薬(利尿薬・β遮断薬・アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬・アンジオテンシン受容体拮抗薬・強心薬など)を投与します。
多くの方はこれらの治療で日常生活を送ることが可能となります。しかしながらこれらでも症状の改善しない重症心不全の方もおられます。
このような方に対しては、
心不全の心臓では、心臓の筋肉に何らかの障害を認めるため、不整脈(心室頻拍や心室細動)による突然死が多いことがわかっています。また心房細動を合併すると心機能は20%から30%低下するといわれています。このような心不全患者さんにはカテーテルを用いて不整脈を治す治療(カテーテルアブレーション)を行うこともあります。
また心臓のポンプ機能が低下していて、さらに致死的な心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)を起こす危険性のある方では、突然死を防ぐためにCRTと除細動器の機能を有する器械を身体に植込む「CRT-D治療(両室ペースメーカ機能付植込型除細動器埋込術)」を必要とすることがあります。
心不全は放置すれば生命の危険を伴いますが、これらの治療を組み合わせることで生命予後の改善(寿命の延長)と生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:QOL)の向上が望めるようになってきています。適切に治療を受けられ、心不全で命を落とされる方が減ることを望んでいます。